alphaのときどきブログ

Webにちょっとだけ関係した仕事をはじめた元Webディレクター兼業主婦が徒然と書くブログ。読書記録、美術展の感想など。

3月第5週(3/28~4/3)に読んだ本

今週は3冊

3冊とペースダウンしたのは、日々の都合も勿論ありますが、それ以上に、濃い本を読むのに時間が掛かったからです。
目標の目安として冊数というのは分かり易いですが、1冊1冊その本の特徴があるので単純に冊数だけでは計ることができないものもあるな、なんて当たり前のことを改めて噛みしめた1週間。

2016年78冊目「決壊」(上・下)平野啓一郎

さて濃い本はこれ。疲れる、疲れるーと思いながらもページをめくって読み終えた本。本好きの友人に「平野啓一郎は年の近い大学生が芥川賞を取ったのが衝撃で日蝕を読んだけれど全然わからなかった(読み終えられなかったかも)」という話をしたところ、私の現代物スキーな傾向を知ってか知らずかこちらの「決壊」を勧められました。
部分部分に主人公の崇やそれを巡る人々の難しい会話が出ては来るのですが(観念的な話等)話の筋は掴みやすいのでストーリー性を好む私も難なく読み進められました。ただ、犯罪者・犯罪被害者・犯罪被害者家族・犯罪者の家族・それぞれの周囲…そして犯罪被害者の家族も犯罪者の家族もそれぞれの考えがあるということ。フィクションなのにノンフィクションのような、テレビで見ている事件の裏に起きていることを突き付けられたような、そんなしんどさがあります。
そしてそういった客観的な事実が並べられても読者である私自身が登場人物をそれでも疑い続けたり…
一読で全て分かったとはとても言えません。図書館で借りたものですが手元に置いて繰り返し部分読みしたい本。
そして自分の頭にあったことを的確に表してくれた、と思ったのは人は二重人格でもなんでもなくて状況によってそれぞれ違う態度になるということ。確かに、「本当の自分探し(はぁと)」とメディアは煽るけど本当の自分なんて1つなわけがないやん。
そういったところの適切な描写や的確に重いテーマを書ききる平野啓一郎の才能に嫉妬してしまいます。その才能ゆえに主人公の崇のような苦悩もあったのだろうとしても。それは凡人の夢想なのでしょうか。

 

決壊〈上〉 (新潮文庫)

決壊〈上〉 (新潮文庫)

 

 

決壊〈下〉 (新潮文庫)

決壊〈下〉 (新潮文庫)

 

 

2016年79冊目「田舎の紳士服店のモデルの妻」宮下奈都

疲れたので楽しい本を読みたくなり楽しそうなタイトルのこの本を読むことに。宮下奈都さんの名前は文庫の企画短編集で何度か見て読んだことこともあるはずですがあまり気にも留めていませんでした。SNSで後輩が宮下さん作品をいいと言っていたことと「羊と鋼の森」が話題で本屋さんで平積みになっていることから興味を持ち、図書館にあった本を借りてみました。
ほとんど貸し出し中だったので1作ヒットすると過去の本が図書館で回るようになるのを実感。これが図書館でなくて購入に回るのが出版文化に貢献出来る方法なんでしょうけども。
されこちら、案外単純に楽しい話ではなかったけれど穏やかに読めました。読了後Amazonレビューを見たら主人公を悪く言われていたけれど、私は不快ではなかったな。間違ったプライドの高さに通じるものを感じたからからしら(笑)冷静になると主人公の行動や性格はどうなん?と感じる描写もありますが…

あとは明言されてはいないけれど筆者の故郷福井市が舞台でいい空気感を醸し出しているから読んでいていやな気持にならないのかも。問題提起もほんわりとした空気に感じる宮下作品もこれからもっと読んでみたいです。読みたい作家増えてるのは幸せ。

田舎の紳士服店のモデルの妻 (文春文庫)

田舎の紳士服店のモデルの妻 (文春文庫)

 

 

2016年80冊目「雨のなまえ」窪美澄

窪さん作品も何だかんだデビューから順を追って読み進めている今年。デビュー作のパンチが薄め作品が続いている感じですが、こちらはパンチではなく冷んやりとした気持ちになる作品が続く短編集。うち3本ほどは東日本大震災に絡んだ話が出てきてあの頃またその後の現実の一部のような。美人で風変わりな女性と結婚した男性の話が一番怖かった。現実って何なんだろうね、という感じの。

雨のなまえ

雨のなまえ

 

 

今週の1冊

以前、1週間に読む本の量が少ないといい本に出会えない、と書いたこともありましたが前言撤回(苦笑)少なくても残るときは残るので良書に出会うのはタイミングなのかも。
どの本も自分と違う人生を経験できた気になったりしてよかったのですが、今週はやっぱり「決壊」。しんどかったけど!