alphaの(毎週更新)日記

Webにちょっとだけ関係した仕事をはじめた元Webディレクター兼業主婦が徒然と書くブログ。読書記録、美術展の感想など。

「ジョルジョ・モランディ -終わりなき変奏-」兵庫開催に行ってきた

カエルが出迎える兵庫県立美術館

先日、神戸まで出掛けることになりました。せっかく神戸まで足を伸ばすしどこか寄りたいなーと思ってイベントを探したら兵庫県立美術館で静物画の展覧会をしているようでした。絵を観るポイントは何も分かっていませんが静物画好きです。

いや人物画も風景画も好きだけど、中学の選択授業の美術を選択して、その時描いたのが静物画だからなじみがある、のかな。まあ、授業の課題だと静物画が一番手間やお金がかからへんよなぁという事情が今なら分かるけど。

脱線しましたが、そんなわけで、静物画だし画家のことは知らないけどサイトにあがってる絵は好きなタッチだしと兵庫県立美術館「ジョルジョ・モランディ -終わりなき変奏-」に行くことにしました。

www.artm.pref.hyogo.jp

兵庫県立美術館は90年代までは阪急三宮から2駅のところにある王子公園駅の近くにありました。そこは通学定期券で通えることもあり、何度か行っていましたが場所が変わってから行くのは初めてでそれも楽しみでした。

普通のみ止まるJR灘駅三ノ宮駅から1駅、東からの向かった私は芦屋駅で普通に乗り換えて数駅)から歩くこと10分、HAT神戸とのサインが見えたら割とすぐのところに美術館はありました。

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カエルが屋上にいてびっくりするやん(帰宅後調べたところシンボルオブジェのこと。限定ものではないのね)。記憶にある王子公園の兵庫県立美術館は高さのあるところではなかったので巨大な建物にも驚き。あと結構海が近い立地でした。

 

展示告知ポスターもありますが、入り口に大きく告知もあり。期待が高まります。

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開館時間の10時過ぎに行くと館内は空いていました。1階でチケットを買って3階の展示室に行くという導線になっていましたが、エレベーターを待つのを躊躇って階段を選んだところかなりの階段数を上がることになりました…運動不足だからいいけど。階段数を外観から推測しておきたかったところ。

モランディのことを知る

展示室にも並ばずに入れ、人の多さも知れていたのでゆっくり観られそうな雰囲気でした。全体的に明るく、天井も高く広々した空間です。
最初の画家紹介に、モランディは生まれたイタリア・ボローニャでほぼ一生を過ごした、とありモランディという人物に興味が沸きました。これまで観てきた美術展で、画家、芸術家は軒並み生まれ故郷を後にし都会や芸術家が集まるところへ向かっている印象を受けていました。現在でも○○するには都会に出ないと、海外に出ないと、田舎に行かないと、と移動することはいい意味で煽られる一方、生まれたところにずっといることはあまり光が当たらず、時にネガティブに語られたりします。なのでこれほど大きな個展が開かれる画家が地元にいる人であったということ、そんな画家が描いたものはどのような絵なのか、とても興味津々でした。
 
今回の展示でありがたかったのは、展示セクションごとにパネルになっている解説と同じものがプリントされ配布されていたことです。この形式だと、パネルを見上げて読み込む必要もないですし、絵を観ながら解説を参照できます。特に、今回のモランディについては教科書で知っている、というレベルの知識もなかったため、たいへん助かりました。
どこで読んだか失念しましたが、日本の美術館は解説が多い、展示物は自由に見るべきだ、という論調を目にしたことがあります。確かに芸術品は自由であるべき、というその主張にも頷けるところがあります。ですが私はこれから芸術家になりたいわけではなくWebディレクターとして、一社会人として、一人の人間として、芸術に触れることで今の自分にないものの見方だったり知識だったり感性だったり単純に来てよかったなという思いだったりが欲しい。このような場合、得意でない芸術分野でプロのキュレーターの解説に助けてもらうのは理解や楽しみの近道ではないかと考えます。勿論、鵜呑みにせず解説はこう書いているけれど、私はどう考える、どう観るか、と思考することは忘れないようにして。

飽くことなき探求心、飽くことない観賞

テーマごとにセクションは分かれていましたが、セクションがほぼ年代とモチーフを追って順序立てて展示されているため画家の人生を辿っているようで観賞しやすかったです。
画家としての初めのころの作品は既存の画家の影響を受けたとあり、確かに既視感のある作品でした。ですがすぐにその時期を過ぎ私が今まで観たことのないタイプの静物画-モランディの個性が発揮された絵が展示されていました。
ある静物画はモチーフとなっている瓶は顔料を流し込んで色を変更したという解説があり、目からうろこでした。芸術家は見たものに対しアレンジを加える、空想能力が高い、という勝手なイメージがありましたがモランディはモチーフに手を加えることもあったのです。
一方で実体ではありえない器のサイズや背景とテーブルのバランスなど、見たままではなく構図の工夫を行っている静物画もありました。解説でそのように指摘されていて気付いたのですが、解説を読む前は違和感なくみており、読んだ後も頭で不自然なバランスに納得しつつも、自然に成立していることの不思議さにモランディの絵の力を感じました。
他には、同じ器を使い同じ配置で瓶を1本多く入れた絵と入れなかった絵が並んでいました。解説に光で差異が出ているとありました。
小さい頃から気に入らないともうやめ!最初から作り直す!という性格の私は(間違った完璧主義という、ブログが続かない性格)解説がなければ、モランディさん出来上がりに気にいらへんくて描き直しはったんやな、気にいらんかった方の絵も展示されてお気の毒にと思ったに違いない(苦笑) どっちがいい悪いでなく瓶の有無で光による影、それに伴う色彩の変化探求をしているなんて…。キュレーターの解釈かもしれなけれど、確かに1本の瓶で違う影がある、違う白になっている、この違いをモランディは描きながらどう考えたのだろう…似ているけれど違う2つの絵にくぎ付けでした。
少しの違いで大違い、というのは当然Webの世界でもあって、そんな現場も経験してきましたが、芸術家は天才で次々に評判の高い絵を生み出している、なんて思っていましたが研究に実践を重ねているものなんですね。
静物画の最後のセクションはボローニャ郊外のグリッツァーナに新築したアトリエの環境の影響で、青が印象的な静物画が展示されていました。確かにそれまでポスターはじめ広告物にある黄色ベースのグレーあたたかいけれども淡々とした色合いが印象的でした。
他に印象に残ったことは、銅版や水彩画も多く展示されていたことです。特に水彩画は一番身近な図工・美術だったにもかかわらず大人になって観る絵は軒並み油絵でした。水彩画でモランディの眼を通して描かれた静物画はリアリティさは描かず、しかし淡い色と強い色のメリハリがあり自然とモチーフが浮かび上がる水彩画でした。
そして何度となく解説にも出てきた「光」ですが本当に明暗、陰影のバランスが印象的な静物画の数々でした。80枚近く静物画を観てきたのに飽きませんでした。
最後の2セクションは風景画と花の絵がそれぞれ1セクションずつ展示されていました。個性は勿論出ていましたが私は静物画に心を囚われてしまったこともあり、こんな絵も描いてたんだなぁと余韻を楽しむように観賞しました。
時間的に私は見られなかったのですがモランディの生涯と絵画についての15分映像もありました。20-30人分の席がありましたが埋まっており盛況でした。
 
モランディのことを何も知らずに訪問しましたが、静物画好きにはたまらない!静物画の新たな見方を知り、味わえる美術展でした。
大満足して出たところにモランディ展特設ショップがちゃんとあっていつも通りポストカードを買いました。 

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図録も欲しいなぁと考えるぐらいでしたが、そこは見送り…

その代わりにモランディが作品中に出てくる原田マハさんの小説を収録とキャッチがつけられていた小説トリッパーのバックナンバーを買ってしまったん。だって20周年で寄稿している人が興味のある現代作家が多かったんやもん。美術展で刺激を受けた時、自分が影響を受ける分野ってやっぱり文学なんやね、と再認識。

モランディ展から得たものと地元愛

さて展覧会ブログの締めですよ。ちなみにこのモランディ展ブロガー用内覧会があったとのこと…。そもそもその頃ブログの記事もほとんどなくブロガーと言っても落選してたと思うけど(大汗)今後ブロガーイベントに参加できるぐらいになるといいなぁ。
 
静物画について、光に注目すること、構図の工夫、モチーフとされているもの、観る様々なポイントを知り、知的好奇心が満たされた展覧会でした。そして生まれ育ったボローニャ(移り住んだアトリエもボローニャの近く)を出なかったモランディ、一生独身で静かな人生を過ごしたモランディ、画家に対する勝手なイメージが変わった展覧会ともなりました。そしてたくさん心を揺さぶられつつもモランディの絵を観るとほっとする、あったかい気持ちになる展覧会でした。この記事を書いている今もポストカード見るといいわぁーほっこりするわぁーという状態。
 
そして。私は地元は出たけど国は出てない人、そして未だに生まれ育った兵庫県に神戸市に愛着があり過ぎる人やねん。これってWebディレクターとして視野狭窄に陥っているんじゃないかしらと気にしてたのですが、地元に住むことと愛着あるということが別にマイナスでも何でもないよね、なんてモランディの絵から拡大解釈して勇気をもらってしまいました。地味に淡々と生きることもよしとしていたい。勿論モランディは住む場所など関係ないほどの芸術の追求をしていたので、そこはセットで認識しておく必要があるけど。
 
あと地元への想いということでちょっとした余談。残念なことに美術館の3階のトイレが暖房便座じゃなくて冷たかった…! これがもう築何十年の建物なら気にしないんですけど新しい施設なのになんでって悲しくて。兵庫県財政厳しいのかな…って。兵庫県で生まれ育ってるのに就職後住んでないから一銭も税金入れてなくてごめんねって気持ちに思わずなったよ。ふるさと納税するねごめんね!って今扶養に入っちゃってるし稼ぎないのだった。どうして働いてた頃にしなかったのか。復職した際にはがんがん地元にふるさと納税しようと心に決めました。
 

モランディ展、関西どころか西日本ではこの兵庫県立美術館での開催のみで、あと2週間2/14までです! ぜひ駆け込みでどうぞ。